これまで、数々の革新的な音楽を世に送り出してきたバトルス。新アルバム「ドロスグロップ」その第4弾は、これまでで最高の出来栄えであると評判です。ここまで完成度の高い作品を仕上げられたのは、メンバーの1人が脱退していることと深く関係があるようです。
前アルバムのミラードとは作風が少し変化した今回のアルバムは、その製作途中にタイヨンダイ・ブラクストンがバトルスを脱退するという事件の中で作られました。彼らはどんな心境でこのアルバムを作っていったのでしょうか。
前記した通り、ブラクストンはバトルス内でも中核に位置しており、そのセンスの良さや才能を存分に発揮していました。彼の感性に、他メンバーの技やセンスが入り混じってできたのがバトルスなのです。
順調に進んでいったかに見えたバンド活動でしたが、ドロスグロップの制作時に問題が発生してしまいます。それは、彼らの作曲の仕方に起因します。メンバーの誰かが持ってきたアイデアに、他3人の技術や思いを組み込み、メンバー全員が納得するまで何回でも作り直すという彼らの手法は、独創的な感性の持ち主である4人の意見が食い違うことも多々あったようです。
最終的には、ブラクストンもバンドを脱退してしまい、中核メンバーを失ってしまったバトルスは、崩壊も囁かれるほどでした。残された彼ら自身も、その件に関してインタビューに答えています。それでも彼らを支えたのは、やはりファンの存在でした。
独創的な音楽を創り出しているバトルスは、初期段階ではなかなか受け入れられることもなかっのですが、コアなファンを始め、これまで多くのファンを獲得してきました。特に思い入れが強いのが日本のファンだ、と彼らは語っています。初期のバトルスの活動地域はニューヨークでしたが、日本での公演を経て多くの日本人ファンを得ることに成功しました。現在でも根強く残るファンをどうしても置き去りにできないと感じたに違いないでしょう。
4人ではできない、3人ならではの調和の取れた音楽が今回のドロスグロップの特徴として挙げられます。プレッシャーを乗り越えることで一皮剥けた、新生バトルスの音楽には大きな力があります。英国の音楽誌NMEにて大絶賛を受けたこのアルバムは、新たなバトルスの礎になるでしょう。既存の音楽に捉われない自由な作風を持つ、破天荒な音楽が持ち味のバトルスは、今後も革新的な音楽を私たちに提供してくれるでしょう。